名前 双門の滝
コメント 大峰山系を構成する弥山(みせん)の登山ルートの1つ双門コースにあるで、双門の滝を目指す途中にある滝。双門の滝は、正式に
は一の滝・二の滝・三の滝・大滝の総称であり、この滝は双門大滝が正式名称である。ここは上級登山コースとなっており、常に命の
危険が伴う。切り立った断崖の間を抉るように落下する様が自然の猛威を感じさせる。通常は滝見テラスからの遠望のみで、全体の
景観として見事である。直下まで行くことも不可能ではないが、危険である。公称落差は70mでそちらを記載したが、レーザー距離計
で計測した知人によると50m程度らしい。 百選
アクセス 国道309号沿いの熊渡付近、弥山川が合流する橋(鎖で封鎖)があり、路肩に駐車スペースあり。徒歩で約3時間半
訪問 2013年10月14日、2016年7月17日
<簡易レポート>

駐車スペース(詰めれば7,8台は駐車可能か。)から鎖で封鎖された林道に入る。頻繁に荒廃するが、一応整備はされているようだ。
しばらく進むと少し広くなっている分岐がある。以前はここまで車で来ることができたようだ。 <スタートから約30分>

分岐を左に下ると5分ほどで白川八丁に出る。一見すると涸れ沢の、伏流水で地中を流れている場所である。基本的にゴロゴロ
転がった石の上を歩く。
途中から左岸に入り登山道を進む。以前のルートであった橋がいくつか崩落・欠損しており、現在は基本的に迂回するルートを辿るが
一本道なので迷うことはない。沢に降り、白川八丁の終点にガマ滝がある。 <分岐から約20分>

左岸の登山道を進むと、下に取水施設が見える。この先も橋の崩落・欠損が見られる。
なお、ガマ滝から約200m上流に、旧ルートの橋付近からは双竜の滝が見えるが、現在はかなり見づらい。
沢に降り一度渡渉があるが、水量が少ないときは、飛び石で渡ることが可能である。
登山道を進むと間もなく涸れ沢に出るが、ここが最初の難所で岸壁のへつりと巨岩登攀がある。
以前あった梯子は朽ちており使い物にならず、横にロープもかかるが数メートル垂直登攀なので、巨岩を登るほうが現実的。ただし、
背の低い人には結構大変である。この辺りは岩が濡れているかどうかで大きく難易度が変わる。
川から離れ登山道を登って行くとじきに一の滝と二の滝がある。 
直前に尾根を上がっていくととんがり帽子状の岩に出るが、ここを左から周る旧ルートは滑落の危険がある。そのまま右を行くとすぐ
梯子に出られるので、注意が必要(踏み跡を見ると左に行きがちで、2度とも左に行った。気づくのはぐるっと周った後である。)
<ガマ滝から約1時間10分>

岩を少し下り吊り橋を渡ると、ここから本格的に高度を上げることになる。以降、梯子や急斜面を木の根等を利用して登って行く。
余談だが水平距離でいえばスタートからここまでが約4分の3で、残りは4分の1程度だが、双門テラスまで400mくらいの標高差が
あり、それだけに、ここからはまさに死と隣り合わせの世界といえる。
高度を上げて行き、しばらくすると、梯子を登った先に綺麗な滝壺が見えるが、岩に隠れて滝は見えない。登山道を離れて下って行く
が、幅は狭く、岩を少々強引に降りると、河原が広がり、美しい滝壺を携えた三の滝がある。 <一の滝・二の滝から約20分>

登山道に復帰し、折り重なった岩の間をくぐり、高度を上げて行く。
ここからは梯子が連続し双門コースの名物となっている。短いものもあるが、長く傾斜のきついものが多い。その中には、有名な水平
 梯子も2つくらいあり、まさに空中散歩である。
そのほか最小幅1m足らずの馬の背もある。従って、高所恐怖症の人には厳しいと思われる。ただ、あえて周囲の景色を見ないよう
に歩いたせいかもしれないが比較的新しい梯子と馬の背は、聞いていたほどの恐怖感はなかった。
しばらくすると最大の難関が現われる。鎖が設けられた急傾斜の岩場で、高さは7mくらいだが、右側には一気に視界が広がっており、
誤って手を離せば数秒の空中遊泳の末に真っ逆さまに谷に落下し、致死率100%だろう。
遥か下の下界が見渡せてしまう。
ここは初訪問時に比べ、鎖に取り付きやすくなっていた。
これをクリアすればあとひと踏ん張りである。梯子と急傾斜の登りを繰り返し、29番目の梯子を登ると間もなく下りとなる。
3つの梯子を下ると、場違いにも思える広場(滝見テラス)がある。ここからの遠望が基本となる。 <三の滝から約1時間10分> 

<総括>
百選の滝を見る通常の場所までのアプローチという点でみれば、間違いなく百選滝中、最難関である。行程は休憩・撮影を含めると、
片道5,6時間程度だろう。
毎年のようにこのコースで滑落死・遭難が発生しているそうで、滝めぐりを始めて以来、ここだけは手を出すまいと思ってきた。
参加を決めたときから、ずっと言い知れぬ不安に襲われ、更に前日、訪問済みの滝を再訪しながら宿に入るはずが、国道封鎖による
迂回を2度も強いられ、かなりの遠回りをさせられてしまったことも相まって、スタートするまで不安が続いた。
前日に1000キロ強の運転をしている足の疲れという一抹の不安を抱えてのアタックだったが、実際行ってみて、色々聞いていた情報
と比べると、馬の背のほか、空中散歩を含めた梯子は思ったほど恐怖を感じなかった。
しかし、7mほどの鎖つき岩場を登るところはとても怖かった。
ここは、同行メンバーが不安であればお助けロープを出したほうが良いかもしれない。
たぶん自分1人のアタックではこの滝まで辿り着けなかっただろうし、そういう意味で、自分の技量では分不相応の滝だったと思う。
帰路も同じルートを下ってきたが、くだんの岩場があるため、登山道を更に登山道を進んで、狼平から別ルートで下山することが推奨
されている。
なお、下山中、この岩場に着くまでが不安で仕方なかったが、鎖を掴みながら、足場を確認しつつ降りたら、登りほどの恐怖はなかった。
下山は撮影なし・休憩僅かで4時間弱だった。無事に下山してきたときは、本当にホッとした。
このコース、至るところにマーキングのテープが着けられているのだが、これがある意味、ルートミスを招く恐れがある。
なぜなら、大きな落石、崩落等があるたびに迂回コースが設けられる一方、従来のテープも残っているので、旧ルート・新ルートの目印
があちこちに存在している。そのため、誤って旧ルートの目印に従って立ち往生し、引き返すということが何度かあった。
これは往路より、復路のほうでミスをしやすいと感じたし、ほかのメンバーも似たようなミスをしたそうなので、注意が必要だろう。

個人差があると思われるが、ほかに難関滝に挙げられる茶釜の滝の難易度とは雲泥の差があり、七ツ釜滝も体力消耗は大きいが
難所が多いわけではない(ともに昔よりは整備が進んでいるため)ので、常にちょっとしたミスが命取りという意味では、やはり双門の滝
は別格だと思う。
肉体的疲労よりも精神的疲労が圧倒的に多い行程だった。

〜追記〜
2013年の訪問後、二度と行くまいと決めていたが、良く御一緒する滝仲間2人から案内を頼まれた。当初は断っていたが、初訪問時
は自分の力で行けたのか?力量不足だったんじゃないのか?という逡巡があったことから、無事案内して戻ってこれれば自分の力で
行ける証明になると思い、案内役を承諾した。案内する以上、同行者の安全にまで責任を負うのは当然であり、もちろんそこを踏まえて
のものであることは申し添えておく。
2015年に一度アタックを試みるも、直前の台風から、沢の増水は尋常ではなく、林道も崩壊していたことから、渋る2人を説得し撤退。
2016年に再訪問となった。
今回も当日の天気が怪しかったが、10時頃からの雨マークを踏まえ、5時過ぎのスタート。
今回は沢の水が多めで、岩も滑りやすく、一の滝・二の滝手前の、沢から巨岩帯を突破し橋に取り付くまでが一番の難所となった。
一方、急傾斜の岩場にかかる鎖場は取り付きやすくなっていた。
2度目のアタックでは、途中の滝はスルーし、小休止を数回挟みつつ、3時間半程度で到達した。
過去の記憶を手繰りつつ、今回無事行ってくることができたのは自信になるとは思うが、やはり再訪問はしたくないところである。
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